01 不思議な言い伝え

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青森県の岩木山の麓にある小さな村の、ある農家が私の母の生家でした。
数代前まではかなりの土地を所有し栄えたということを聞いてはいましたが、今ではその家を継ぐものもなく、昨年取り壊されたということをごく最近風の噂に聞きました。

その母方の一族には不思議な言い伝えがありました。
その言い伝えとは、私が幼い頃にその地方でいう「イタコ」、俗にいう霊能者の伯母から聞かされたものでした。
青森県津軽地方のシンボルである岩木山には、古くからお山信仰という山を神とし祭る風習があり今でも続いていますが、母方の曾祖父もそのお山信仰を熱心にした人でありました。
時折、通常の登山道ではなく岩木山の道なき道を登り、秘境ともいえる頂上付近の滝の元の洞窟内で一人山篭りの修行のようなことをし、目に見えないものとの交信をした人であったそうです。
数日間をそこで過ごし、山を降りてくるときには必ず数々の薬草のようなものを持ち神から教えられたものとして、これは何々の病に効くと言っては村の人にも分けていたと聞きました。
母の実家には、それを裏付けるようなさまざまな古ぼけた掛け軸や巻物のようなものがその当時まだたくさん残っていました。
そのおじいさんが、「この家から神に仕えるものをあと6人出しなさい。でなければ、血が絶える。出るまで業因が切れぬ。」と言い残したということでした。
その影響があってか、私にそのことを伝えてくれた伯母をはじめ一族のものは皆見えない世界のことは生まれたときから当たり前に存在するものとして育ちました。
その中でもその話しを私に聞かせてくれた伯母がそういった能力にとても秀でていた人でした。
そして、その時、伯母はこのようなことも私に言いました。
自分も小さい時はこういう道に進むとは思ってもいなかった。でも、ある日突然、夢枕に炎の様な光に包まれたおじいさんが現れて、それから岩木山に行かざるをえなくなってしまった。当時の修行者達に「女は山の聖地に入ってはならない。」といわれ、何もわからないながらも亡きおじいさんに導かれて同じように洞窟にこもりそれから自分にも神が降りるようになった。おまえもおまえのお母さんもいずれそうなるようになっているのだから。早くこの家の業因を切るためにその道に進みなさい。と。

その時、まだ幼かった私には業因とはいったい何のことなのか意味がわかりませんでした。
ただ、目に見えないものがいてそれを神といい人間との深い関わりのようなものがあるのだと漠然と思い、またそのことに何の違和感も持っていませんでした。
そして、それが一族や私の運命を弄ぶものであったことにもまったく気がつかずに…



タグ : 青森 岩木山 言い伝え

02 呪われた一族

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